食の足し算と引き算

食には足し算の方向に進化しているものと、引き算の方向に進化しているものとに分けることが出来ます。

食の足し算

食の足し算とは食材に手を加え、手間暇をかけて美味しい食べ物にすることです。食の足し算の行き着く先は様々な高級料理です。

考え付く限りの手間暇をかけて美味しい料理を提供するのが食の足し算です。お客さんのニーズにあった足し算をすることで、値段が高くなっても買ってもらえるのです。

食の足し算の一つは回転しない普通のお寿司屋さんのお寿司です。手間暇を足して生魚と米をお寿司という高級な料理に仕上げるのです。高級レストランも食の足し算の一つでしょう。

食の足し算はお金の足し算と考えても良いのかもしれません。

資本主義経済においてはどれだけ足し算しどれだけ高い食べ物を提供しても自由です。しかし売れなければ淘汰されてしまいます。料理人はどこまで足し算が許されるのか見極める必要があります。

食の引き算

食の中で無駄だと考え付くものを出来るだけそぎ落とすのが引き算です。出来るだけそぎ落とすので、足し算のように理論上は無限に行うことは出来ません。引き算には技術的な限界が訪れます。

食の引き算の一つは回転寿司です。無駄をそぎ落とすことで実現する低価格を武器にお客さんを回転させることで収益を上げます。セントラルキッチンにより仕込みの手間をそぎ落とします。他にも回らないお寿司屋さんのように本物のネタだと高くなるので、似たような食材でそれなりのお寿司に仕上げます。元々回らないお寿司屋さんが高いのは、売れ残る分も見込んだ値段設定だからです。売れ残ることがなければその分価格をそぎ落とすことが出来ます。

ファミリーレストランも食の引き算を極めつつあります。ファミリーレストランによってはセントラルキッチンで下ごしらえをするので、包丁を置いていないところすらあります。作業の無駄を省くことで提供時間の引き算も行われています。その分人件費が引き算されていきます。味を保ったまま、安く提供出来るように様々な無駄をそぎ落としています。

10年・20年前までは安ければ品質もそれなりでした。食の引き算の基準がコンビニのお弁当との比較になるため、美味しくなければ淘汰されていきます。その意味では、一番食の引き算で成功しているのはコンビニなのかもしれません。コンビニが日々進化させながら一定レベルのお弁当を提供していることで、食の引き算の味のレベルが維持されているのかもしれません。

このように考えると様々な業種が絡み合って切磋琢磨しているようです。10年もするとどのようになっているのか楽しみですね。

投稿者:

呉からの風

呉の医師です。 糖質回避教の推奨者です。 様々な分野で気づいたことを掲載していきます。 怒る必要のない子育てを掲載予定です。