医者が余った後の医者の待遇の予想

時期がいつになるかは別にして近い将来医者が余ることは間違いないと私は考えています。その理由はいくつかありますが、今回は理由には触れずに待遇の予想をしてみたいと思います。医者が余ると私が考える理由に興味のある方は近い将来医者が余る2つの理由近い将来医者が余る3つ目の理由をご参照ください。近い将来医者が余る2つの理由に一定数のアクセスがあるため、医者が余る時代の待遇について書いてみたいと思います。

医者が余る意味は2つあります。開業医が余ることと勤務医が余るという意味です。同時に進行していきますが、大まかな流れでは開業医が余った後に勤務医が余ると思います。勤務医に疲れたり不満があれば開業するという道がありましたが、その道が閉ざされることで勤務医が辞めないため余るという理屈です。都会と地方では都会から余りはじめ、地方に広がっていくでしょう。都会では既に医者余りの予兆が出ています。

開業医が余る

開業医が余るとは患者さんが思うように集まらず、経営が成り立たないことを意味します。開業歯科医が余っている状態なので参考になると思います。開業歯科医は余っているものの、開業医がまだ余る状況に無いのは、医者は診療科が細分化されているからです。

既に開業し患者さんを集めている開業医が患者さんを失って閉院に追い込まれるリスクは少ないものの、次第に患者さんが減る可能性は高いと思います。更に新規開業にはかなりのリスクを伴います。既存の開業医の患者さんの数が減るのを目の当たりにすると、その近隣で新規開業しようとする医者はいなくなるでしょう。つまり資本主義の原理が働くことで収入が減り、結果として開業医が余ることはある程度のところで歯止めがかかります。

開業歯科医が余っていると言われている現在でも、既存の開業歯科医と差別化がはかることが出来る歯科医は今でも新規開業で経営が成り立っています。同様に開業医が余る時代がやってきても、既存の開業医とは差別化をはかることの出来る医者は新規開業をしても経営を成り立たせることは出来るでしょう。

逆に開業医が余る時代の予兆とも言えることは既に起こりつつあります。新規開業医が思っていた程患者さんを集めることが出来ず、閉院し勤務医に戻る話を何件か聞いています。閉院する程ではなくても、当直などのアルバイトに行かざるをえない話も耳にします。スタッフの給料を払うためや家賃を払うためにアルバイトに行くそうです。

開業医が余る時代は医者が余る時代の第一段階だと思います。開業医の収入が減り、新規開業しにくくなる。あるいは新規開業医が閉院して勤務医に戻る時代です。まだ勤務医に戻ると一定の収入が得られるため、開業に失敗してもやりなおすことが出来るようです。

開業医が余る1つの指標は医者が開業しようとしても銀行がお金を貸してくれなくなることでしょう。一昔二昔前には医師免許があるだけで開業のために簡単にお金を貸してくれたと聞いていましたが、今ではかなり綿密に事業計画を立てなければお金を貸してはくれません。特に近隣に同じ診療科がある場合、工夫が出来る医者にしかお金を貸してくれない時代になりつつあるようです。

勤務医が余る時代

現時点で医者が不足していると言われるのは正確には勤務医の不足です。ある程度経験を積むと開業してしまう人がいるため人手不足に陥ります。勤務医は人手不足のため忙しく、疲弊した結果開業に至ることもあるため悪循環に陥っています。

開業医が余る時代になると勤務医から開業医になる医者が減ることで、勤務医が余る時代がやってきます。現在では働く側が働かせる側を選ぶことが出来る売り手市場ですが、勤務医が余る時代には買い手市場になることでしょう。

医者が余る時代の待遇

合理的に考えた医者が余る時代の待遇を書いてみたいと思います。一言で言えば、既に働いている医者は少し給料が下がる程度ですが、新たに雇われる若い医者の給料は極端に低く抑えられることになると思います。何故なら既に働いている医者は雇用契約を極端に変更することが困難だからです。しかし新たに雇用契約を結ぶ新たに雇われる若い医者はお互いの合意の下で自由だからです。極端に少ない給料でも雇ってもらえるだけマシと考える状況であれば、若い医者が極端に少ない給料を受け入れることになるでしょう。医者の世界にも市場原理が働き需要と供給のバランスで給料が下がるのです。何人も働きたい医者がいれば、優秀な人間を安く雇うことが出来ます。安い給料を提示しても働きたいと申し出る医者の中から優秀な人間を雇うことになるのです。

歯科医の世界では上記のことが既に起こっています。本当かどうか確かめた訳ではありませんが、歯科医の勤務医では平均年収が夜勤をする看護師さんの平均年収よりも低いというデータを見たことがあります。これが本当であれば医者の20年後、30年後を予測する参考になるはずです。

若手の医者の給料が少なく抑えられることは既に一部の病院では起こっている現象です。人手不足の病院ではあり得ないことですが、安い給料でも働きたい医者が集まる病院ではレジデントと称して安い給料で医者を働かせています。レジデントは経験を積むことと引き換えに安い給料で働くことを強いられます。本来レジデントとは研修医のことですが、この場合のレジデントとは卒業後2年間の本当の研修医とは異なり、卒業後3年目以降の医者を非常勤で安く働かせる仕組みです。現時点では比較的人気の高い病院が採用している仕組みで3年程度の期間のようですが、近い将来もっと医者が余るようになればレジデントの仕組みを取り入れる病院が増えるでしょう。現時点でレジデントの仕組みを導入している病院であれば、レジデント期間を3年から5年・10年と長くする可能性が考えられます。つまり医者の世界も非正規雇用化が進むのです。

病院の経営者・経営陣の多くは医者です。自分達の給料を下げてまで若い人達の給料を上げるよりは、余っている医者の中から安い給料で働きたい医者を探すことの方が簡単です。自分達の給料は確保しながら、病院の利益を確保出来るからです。病院の経営者・経営陣が医者では無ければ、恐らく医者全体の給料をカットすることが合理的だと考えると思います。病院の経営者・経営陣が医者である限り、新たに雇う医者の給料を安く抑えることになるでしょう。問題はいつからそのような流れになるかです。

極端に医者が余る場合

ここまでは想像の範囲内の医者が余ることを想定した未来予想でしたが、私の提案している病気を避ける理想の食べ方が広まることや他の理屈により病気そのものが減ることや、人工知能による診断や治療が始まると生身の人間である医者を必要としない世の中がやってきます。つまり病気が失くなることで患者さんはいなくなるし、生身の人間である医者は人工知能との競合が起こることで極端に余る可能性すらあるのです。私は人類がガンになりにくい世の中がやってくると考えています。そうなると病院のいくつかは経営破綻してしまうでしょう。経営破綻しないためには既に働いている医者の給料も下げざるを得ない状況に陥るかもしれません。

可能性は低いとは思いますが、もしかしたら企業が社員をリストラするように給料の高い年配の医者をリストラする時代がやってくるかもしれません。何故なら年配の医者は若い医者にはない診療経験という高い給料に見合う働きをしていましたが、人工知能による補助があれば若い医者が経験豊富な医者と同じレベルの医療を提供出来てしまう時代がやってくるからです。人工知能の活用は間違いなく起こることですが、そのことで年配の医者のリストラまで事態が進むかはわかりません。

政治家が医者の利権を守るあるいは人工知能に奪われる生身の人間の仕事を残す方向に舵を切れば、医者のリストラまでは話が進まないかもしれません。どの程度税金を医者に投入するかで延命期間は左右されると思います。

医者の余る時期

様々な要因が絡むため一概には言えませんが、恐らく20年が1つの目安ではないかと考えています。もし国民皆保険を無くすのであれば10年で医者は余る時代がやってくるでしょう。何故なら全額自己負担であれば、少しでもお金を使わなくて済むように多くの人が病気を避ける方法を模索するようになるからです。逆に考えれば国民皆保険という補助のおかげで医者はもうしばらくの間仕事に有り付けるのでしょう。幸か不幸か国民皆保険が失くなることは考えにくいので10年で医者が開業医・勤務医共に余る可能性は低いとは思いますが、10年程で恐らく都会から開業医が余ってき始めると思います。

そして少なくとも30年後には医者は余るでしょう。何故なら30年後には人工知能が人類の知恵を超えると言われています。もしかしたら医者という職業そのものが失くなるかもしれません。職業としての医者は失くならないにしても、生身の人間が医者をする合理的理由が無いからです。確かに人工知能は信じられないから生身の人間である医者を求める人達は一定数はいるでしょう。しかし高いお金を払ってまで生身の人間である医者にかかりたいと思う人は今でこそ一定数いるでしょうが、30年後には稀になるでしょう。10年もすれば人工知能に判断させることは様々な分野で当たり前になるからです。

具体的な時期としては今の中高生、ギリギリ小学校高学年が医者になる頃は開業医は余るものの勤務医は何とか今の待遇は維持されると思います。今の小学校低学年や幼稚園児やそれ以下の子供たちが医者になる頃には勤務医も余る時代になり、非正規雇用が多くなるでしょう。

言い換えると今の中高生、ギリギリ小学校高学年までは何千万もの私立の医学部に授業料を払っても元は取れるかもしれませんが、小学校低学年や幼稚園児やそれ以下の子供たちが大学に行く頃には元は取れない時代になるでしょう。何故なら親の開業医を継いでも経営が成り立ち続けるとは限らない時代に突入するからです。

投稿者:

呉からの風

呉の医師です。 糖質回避教の推奨者です。 様々な分野で気づいたことを掲載していきます。 怒る必要のない子育てを掲載予定です。