センター試験 ムーミン問題は良問

センター試験でムーミンが出題され議論が巻き起こっているようです。しかし問題を見てみるとセンター試験らしい考えさせる問題であり良問だと思います。(著作権の問題がクリアできるかどうかわらないため、画像はのせていませんが興味のある方はこちらをご参照ください。)

私も受験生の時に陥ったちょっとした落とし穴に落ちた人が、出題に問題があるとしているようです。落とし穴とは問題の設定を疑うことです。私が落とし穴によく落ちていたのは国語ですが、大前提として問題の設定に疑問を持ってはいけません。白いカラスと書いてあれば、一般的なカラスは黒でも、そのカラスは少なくとも白として問題を解くべきです。黒い白鳥と問題に書いてあれば、言葉に矛盾がありますが問題の中では白鳥は黒です。今回はノルウェーとフィンランドとあれば、スウェーデンでは?という疑念を持ってはいけないのです。そして問題は解けるようにヒントを配置して作ってあるのです。

テストの問題において、いわば出題者は神様です。自由に設定を行い、問題を作ることができます。その設定が間違っているかどうかは解答者にとって問題ではありません。その問題の設定を疑うことは神様を疑うことと同じです(私自身は神の存在を信じてはいませんが、正しいものの象徴と考えてください)。つまり問題に書いてある事が全てです。試験のルールとして問題の設定だけで考えるという大前提を知らないと、あれこれ知識を元に考えた受験生の頃の私のように苦労してしまいます。私は国語で苦労しました。自分の頭の中にある知識と、問題に書いてあることから問題を解くと誤解していたのです。受験生の当時この大前提を知っていれば、大学受験でこれ程苦労することはなかったように思います。

入試は先入観を持つと答えが出せなくなってしまうのです。そういう意味で70年も前の話ムーミンにしたのは、先入観を持っている人が少ない可能性が高く、良問だと思います。そしてムーミンに気を取られ、記憶で解こうとした人が落とし穴に落ちてしまったのでしょう。センター試験の地理は知識では無く理解度を問う試験だと知っていれば、慌てる事は無かったはずです。

ムーミンの舞台が実在しないから出題ミスや、元々ムーミンがスウェーデン語で書かれていたから云々は出題の設定には何の関係もありません。出題者が実在しないムーミンの舞台をフィンランドだと勘違いしたという配慮すべき点はあっても問題の答えは1つしかないからです。

設問ではフィンランドとノルウェーの違いを位置関係と言語圏の関係から問う問題でした。何語で書かれたか、本当の場所がどこかを問う雑学クイズではありません。受験生で文句を言っている人がいれば、可愛そうではありますがセンター試験の地理の勉強の仕方を間違えているのです。

悪問・出題ミスとは、答えが出せないあるいは答えが2つある場合です。例えば今回の設問にスウェーデンも選択肢にあれば(そもそもスウェーデンとの比較なので選択肢にはなり得ませんが)、答えが出せない出題ミスとなったでしょう。しかしノルウェーとフィンランドと設定されているので、スウェーデンと地理的に近いか遠いかが言語が似ているかどうかで問われ、港が冬に凍るか凍らないかが緯度の割に暖かいか寒いかを理解しているかどうかが問われています。この2点から類推出来るかどうかが問われています。間違いなく答えが一つ出せるので出題ミスではありません。

センター試験の地理は共通一次から移行した当初から暗記科目ではありません。思考科目です。教科書にある必要最低限の知識の習得はもちろん必要ですが、その知識を試験中に活用できる程の深い理解が問われています。暗記科目だと誤解している人が落とし穴に落ちてしまい嘆いているように思います。もしかしたら地理を教えている高校教師も予備校講師も思考科目だと理解出来ず、そのようには教えてはいないのかもしれません。そのため勉強の仕方・解き方を間違えてしまったようです。雑学クイズの解き方を思考力が問われるセンター試験に当てはめようとした悲劇です。

問題の質は高いと思います。地理の勉強を適切にしている人間であれば容易に正解に辿り着けるからです。設定の仕方には疑問があるかもしれませんが、設定を従って問題を解く上では何の支障もありません。出題された問題の設定を疑わない受験生を学校は欲しいと考えています。問題の設定を疑わない良い受験生になることをお勧めします。

ワイドショーでも議論しているようですが、そもそもセンター試験の出題意図を踏まえずに議論しているので混乱しているに過ぎないように私には思えます。もし予備校の地理の講師が疑問を呈していれば、その講師はセンター試験の地理の勉強の仕方、問題の解き方を理解していない可能性があると私は思います。別の先生に教えてもらう方が点数が取れるようになる可能性が高いでしょう。

ちなみにセンター試験の国語では小説の作者の意図が答えにはなりません。小説を抜き出し、その試験範囲に示された文章だけから導き出せることが正解です。試験とはそういうものです。私がこの事実を知ったのは僅か四年前でした。受験生の時に知っていれば、もう少し楽に大学に入れたのにと思います。

センター試験はあと二回行われるようですが、問題の設定が全てというルールを改めて受験生が再確認出来た良問だと思います。受験生のみなさん頑張ってください。