恒常性の話

本来は人間の身体には恒常性(一定の状態を保とうとする性質)を保つ仕組みが備わっているはずです。

例えば身体の水分量が少なくなれば、喉が渇くことで身体が水を飲むことを促します。水を飲み過ぎれば水分量が増え過ぎるので尿をたくさん作り出すことで恒常性が保たれます。体温が上昇し始めれば、暑いと感じ汗をかき服を脱ぐように促します。体温が下がりはじめると寒いと感じ、鳥肌をたて厚着を促します。更に体温が下がればガタガタ身体が震えることで熱を無理矢理生み出すことで恒常性を保ちます。

体重と塩分量も恒常性が保たれるはずである。体重が増えれば減らす方向つまり空腹感を余り感じさせないように、体重が減れば増やす方向つまり空腹感を強めることで体重の恒常性が保たれるはずです。実際に脂肪細胞から出るレプチンというホルモンは体重が減った際に身体が飢餓状態と判断し、空腹感を増やしてより多く食べるように促します。これだダイエットの後のリバウンドを引き起こす原因です。塩分量が増えれば減らす方向つまり塩辛いものを避けて薄味を好むようになり、塩分量が減れば増やす方向つまり塩辛いものを好むように恒常性が働くはずです。

自然界で動くのに苦労する程太った動物というのは見たことがありません。何故なら太り過ぎると動きが悪くなることで、肉食動物だとエサを確保することが困難になり痩せていきます。太った草食動物では他の動物に一番に食べられてしまうため子孫を残すことが出来ないからです。遺跡で発掘された調査によると、人間も太古の昔に木の上で暮らしていた頃には肉食動物の獲物でした。(動物に噛まれた人骨が出土しています)太り過ぎると死を意味していたはずです。太り過ぎるた人間は肉食動物に食べられてしまうため、子孫を残すことが出来ず太り過ぎない遺伝子を持ったものだけが子孫を残すことができたことが考えられます。

猪は秋にドングリなどを大量に食べることで冬を乗り切るための脂肪をつけますが、動きが悪くなる程食べることは考えられません。太ったとしても食料の少ない冬を乗り切るためという合理的な目的がありますし、動きが悪くなることを避けるため無制限に食べるわけではありません。

水族館でサメと餌となる小さい魚が同じ水槽にいてもサメが満腹なら次々目の前の魚を襲ったりはしません。サメにエサを十分に与えることでサメに食べられることなく、同じ水槽で展示できるのです。(実際には少しずつ食べられるらしく、小さい魚の数が減るそうです)

では人間やペット化された動物が肥満で悩まされるのは何故でしょうか?

これまでは自制心の問題で食べ過ぎることが原因と考えられてきました。肥満で悩む人と悩まない人との違いは自制心の違いとされてきたのです。食べ物を我慢できるかできないかの違いだと思われていました。

糖質と塩分には食べた際に快楽が与えられます。スイカに塩やパンにバターが美味しく感じるように、糖質と塩の組み合わせをこの上ない美味と感じるように進化しているようです。その美味という快楽に知らず知ららずのうちにのめり込んで依存状態に陥ってしまっているのです。

いわば糖質と塩気に騙されているのです。そして本来の糖質も塩気の魅力以上に魅力があると脳が自分自身を騙すという錯覚が引き起こされるのです。この錯覚が糖質依存、塩分依存を引き起こすのだと思います。

スナック菓子のやめられない止まらないは糖質というよりむしろ塩気に対する依存ともいえる執着の結果を表していると思います。

バランスをとるはずの恒常性を崩してしまうのが、本来感じる魅力を脳内で自ら増大させる錯覚です。本来感じる魅力以上に魅力を感じてしまうため、バランスを崩してしまうのです。脳が自分自身を騙しているような状態です。メカニズムを理解することで騙されない方法を探すことができます。一度錯覚に陥ると、そのものが無くては生きていけない感覚になることもありますが、その感覚こそが錯覚そのものです。
知恵をつけて錯覚を振り払い、本来の人間が持つ恒常性を取り戻しましょう。