ある営業マンの人と話をしていて驚いたことがあります。会社の方針でとにかく営業をかけろという指令が出ているそうです。営業成績が悪いと営業の仕方が悪いとして上司から責められるそうです。かと言って具体的には営業の仕方は教えてもらえないそうです。営業成績は上げなさい。その方法は自分で考えなさいという方針のようです。上司の方は本来なら営業の仕方を具体的に教えてあげることが仕事ではないかと私は思います。責め立てただけで営業成績が上がるのであれば苦労はしません。責め立てられた営業マンは説得マンになって会社から送り出されます。相手を説得して商品を購入してもらおうとします。一度や二度なら説得に応じてくれる人もいるかもしませんが、長続きする訳がありません。
その会社の方針で驚いたのが、とにかく新規に営業をかけるように説得マンを送り出すそうです。相手が求めていようと求めていなくてもとにかく営業するように言われるそうです。正に説得して営業成績をあげる説得マンの行動です。
相手が求めていなければ新規で商品を買ってくれる可能性はありません。相手が興味を持ってくれて初めて営業する意味があるはずです。商品の良さを知ってもらえれば買ってくれるはずというのは売る側の勝手な思い込みです。商品の良さを知ってもらうことと、説得することを混同して売り込む営業マンもいます。買う可能性が全くない相手に営業をかけるのはお互いに時間の無駄です。
魚がいないのに網を下す漁師
相手が求めていないものを面会して売り歩くのは、まるで魚がいない漁場で網を下している漁師のようなものです。
営業マンは新規に営業しなければ売れないから、相手が興味がなくても仕方ないと考えているのかもしれません。誰に売り込むべきか先に考えるべき(どこに魚がいるか)ですが、とにかく営業をかける(とにかく網を下す)という効率の悪い方法をとっているのです。下手をすれば海の魚を捕ろうしているのに湖に網を下す的はずれなことをしているかもしれないのです。そこまで極端ではなくても、瀬戸内海でいるはずもないマグロを追いかけているのかもしれません。同じ海だからいるはずだとしてとにか網を下しているのかもしれません。魚を捕ろうと考えるならば、まず一番にすることは捕ろうとする魚の生態を知り、どこで網を下すのが一番かを考えるべきです。
普通の漁は
漁師さんからすれば網を下さなければ決して魚が獲れることはないと考えることに似ています。しかし魚がいないところに何度網を下しても、決して魚が獲れることはありません。何故なら魚がいないのですから当たり前です。そこで漁師さん達は海鳥などをヒントに経験と勘を頼りにして魚のいるところに網を下すのです。当然魚のいるところに網を下すのですが、外れることもありますので最近では魚群探知機を使って確実に効率良く網を下して魚を捕まえます。
漁師さんは魚がいる可能性が低いとわかっていてわざわざ網を下すことはしないはずです。何故なら網を下すお金と時間が惜しいからです。少しでも魚がいる可能性の高いところで網を下すはずです。
しかし説得マンを送り出す説得会社は、闇雲に網を下すように誰彼構わず説得します。聞かされる方は元から興味がないのに…と思いながら聞きますし、説得する方はこれだけ説得しているのに良さがわからないんだと考えるのです。客観的に第三者の視点から見るとお互いが時間を無駄にしていることがわかります。
効率的な営業
私の考える効率的な営業は、漁師さん達が海鳥や魚群探知機を使って魚がいる可能性の高いところを探すような営業です。
つまり自社商品を買ってくれそうな人を探すのです。決して手当たり次第に説得したりはしません。
例えば車の営業マンの場合、2人乗りのスポーツカーを得ることを想定してみてください。どこに買ってくれそうな人がいるかを考えるのが、魚がいそうな漁場を探すことになります。2人乗りのスポーツカーを家族連れに売り込もうとしても時間の無駄でしょう。会社がセカンドカーとしての市場を想定していたとしても、現実に2人乗りのスポーツカーを買ってくれる可能性があるのは独身の人でしょう。もしくは子育ての終わった中高年の方かもしれません。家族連れを狙って説得しても徒労に終わるでしょう。逆にミニバンを売るのであれば、家族連れに売り込むのが効果的です。
営業マンは営業するのであれば、闇雲に営業(説得)するのではなく、前もって誰に得るのかが一番重要だと思います。
そして会社がまず誰に得るのが一番効率的かを絞り込むべきです。会社としてどこに網を下すのが効果的かを考えて、社員を指導するのが本来の上司の役目だと私は思います。
説得会社の行く末
説得マンを送り出す説得会社が成り立つのは、まだまだ説得するという無駄なことをする余裕がある会社なのだと思います。これだけ情報が行き渡り始めると説得会社の存続は近い将来危うくなると私は思います。
21世紀に未だ説得マンを平気で送り出す説得会社があるのに驚いたため書いてみました。実は業績の芳しくない企業は営業と称して説得して回っているから、業績が上がらないのかもしれません。