先日テレビを見ているとある企業のエンジニアの人が出ていました。納得の出来る良い物を作れば売れるはずだと言っていました。
良い物を作れば売れるという考え方には2つの勘違いがあります。1つは誰にとっての良い物かという視点、もう1つは良い物は売れた物だという考え方です。
エンジニア達が作っている物は残念ながら私には売れるとは思えませんでした。何故なら使う人がイメージ出来ない商品だったからです。良い物を作ればの良い物とは、作り手にとって良い物という意味のようです。テレビを見ている限り買い手にとって良い物という視点ではありませんでした。人々が求めているのが価格なら性能は二の次のはずですし、人々が求めている物が性能であればデザインはオマケでしか無いように思います。人々が求めている物が何かを探ることなく、自分達の技術で作ることの出来る物を探している印象でした。テレビに出ていたのは社長はデザインにこだわり、エンジニアは性能にこだわっていましたが、どんな人に使ってもらうのかという一番大切な視点は抜け落ちていました。実際には目新しさで海外では売れるのかもしれませんが、目新しさという曖昧な指標に賭けるのは勇気のある企業だと私は思いました。
使う人が極一部の人でも、ピンポイントで心をつかめば物は売れます。しかし誰が使ってくれるのか曖昧なまま商品を作れば、結局誰も使わないまま終わってしまいます。
間違いなく売れる物が良い物です。良い物が売れるとは限りません。作り手にとって良い物が、買い手にとって良い物とは限らないからです。多くの商品が作り手の都合によって作られています。技術の限界だからここまでしか小さく出来ないとか、それらの性能を全て搭載すると価格が高くなりすぎるなど作り手の都合で折り合いのつくところで妥協した商品が多いのが現状です。しかしこれまで妥協せず買い手の欲しい商品を突き詰めて作り込んだ人間がいました。スティーブジョブズ氏です。社長でありながら妥協を許してくれない最高の消費者だったのです。欲しい商品を突き詰めて、エンジニアが答えを出すまで許さなかったそうです。買い手にとっての良い物を突き詰めて作り込んだ結果爆発的に売れたのだと思います。
通常の企業が良い物を作る目的は利益です。良い物を作ると売れるからです。利益を目的として追い求めると、企業の利益と消費者の利益は相反します。相反することの調整で多くの企業の方針がブレるのです。しかし視点を少し変えるだけで売れる物を作ることが出来るようになります。それは「利益は企業の為ならず」という私の考えた諺を実践するのです。利益を追い求めるのではなく、企業が消費者の幸せを実現することを目的とし、利益はその運営資金という考え方です。絶えず消費者のためになるように企業が行動するのです。その中で運営資金としての適切な利益を得る方法を考えるのです。このように考えるとブレることがありません。
先に消費者の欲しい物をリサーチし、出来る物をお客さんの欲しい物に出来るだけ近づけるのです。技術の限界を集めて出来る物を売り出すのでは、当たり外れが大き過ぎます。その結果日本の家電は技術はあるのに(技術があるから?)苦戦することになりました。