当初は糖質一度に食べ過ぎ症候群と命名し、その後ジュースなど飲み物でも発症することがあるため糖質一度に摂り過ぎ症候群と命名していましたが、突き詰めて考えると一時的に高血糖状態に陥ったことで発症しているらしいことがわかりました。そこでカテゴリ名を一時的高血糖症候群に改名することにしました。
糖質一度に食べ過ぎ症候群という疾患概念に気付いたきっかけは、患者さんの言葉でした。食事の際おかずから食べて御飯を後で食べるとアトピー性皮膚炎がおさまっていたのに、ご飯から食べるとアトピー性皮膚炎が悪くなると教えてもらってからでした。糖質を控えることでアトピー性皮膚炎が改善することは既に報告されている先生方がおられるため理解はしていましたが、食べる順番で改善の可能性があることがわかったことは驚きでした。小さいお子さんの場合、おかずから食べるようにするだけでアトピー性皮膚炎やあせも・乾燥肌などが治ることがわかりました。逆にご飯ばかり食べているお子さんだけが発症していることがわかりました。
その後患者さんと話をしていた際、一度に沢山食べた場合に症状が出ることがわかり糖質一度に食べ過ぎ症候群と命名しました。血糖値持続測定器リブレにより食後血糖値を測定したことで、糖質と血糖値の関係の私の理解が深まり、糖質を一度に沢山食べなくても発症することがわかりました。何故ならおにぎりを食べてお茶を飲むだけで食後血糖値が急上昇することがわかったからです(参照:おにぎり2個とお茶の食後血糖値)。結局食後血糖値は食事中糖質割合に依存するだけのようです。つまり糖質割合が高ければ、必ずしもそれほど多くの糖質を食べなくても発症することがわかりました。かねてから食事の際にはおかずから食べるようにお伝えしていましたが、おにぎりやうどん・そうめん・パンを食べる場合におかずを食べてから主食を食べるという発想が欠落しておられることがわかりました。つまりこちらは伝えているつもりですが、患者さんにとっては伝わっていない状態であることがわかりました(説明の仕方・参照:「説明した」と「説明したつもり」の違い)。そこで説明の仕方を変え、炭水化物だけ食べることを避けるように提案することにしました。具体的にはおにぎりだけ・うどんだけ・そうめんだけ・パンだけ食べると病状が悪化するので、そういう食べ方を避けおかずと一緒に食べましょうと伝えるようにしています。おかずと一緒に食べている方は、デザートとしてお菓子や果物を食べている可能性が高いと思います。そこでデザートやお菓子は食後ではなく間食に食べるように提案しています。更に糖質だけで食べると血糖値が急上昇する可能性が高いため、おやつの時間に食べるデザートやお菓子の前におかずを食べることを提案しています。具体的には卵やチーズ・ソーセージ・枝豆・ナッツ類などを食べてからお菓子や果物を食べるように提案しています。
病気を避ける理想の食べ方、つまり血糖値の上がりにくい食べ方により病状が改善するため恐らく血糖値が上がることが発症の引き金になることは間違いないと私は考えています。糖質を食べないことで血糖値が上がらないことはもちろんですが、糖質を食べたとしても食べ方の工夫により症状を起こさないことが出来ると考えています。
糖質は無理に食べる必要はありませんが忌避する必要はなく、血糖値を上げない食べ方であれば、楽しんでも良いものだと思います。糖質は砂糖同様嗜好品として楽しむべきものだと私は思います。