暗記力・検索能力に大した意味がなくなる理由

少し前まで暗記力や検索能力はある程度頭の良さを示す大切な能力でした。出題範囲を決め、覚えているかどうか?その覚えている内容を短時間で取り出せるかどうか。そして頭の中から取り出した情報を使って考えることが出来るかどうか答えさせるのが入試問題です。

暗記力・検索能力がもてはやされた理由

かつて人間の頭脳しか効率的な検索方法がありませんでした。だから医学書やこれまでの治療例を覚えさせて頭の中を検索するように医者を育て、六法全書や判例を覚えさせて頭の中で検索するように弁護士を育てたのです。

人間の頭脳しか効率的な検索能力が無かったので、人間の頭脳を活用するのは仕方ありませんでした。だから暗記力と検索能力に長けた人間が重宝されていたのです。だから暗記力と検索能力が良い人間が頭が良いとされていたのです。

その人間の検索能力の良し悪しをはかる目安として入試問題が活用されていたのです。教科書で出題範囲を決めて暗記力を試し、応用問題で検索能力を試すのです。

暗記力や検索能力の意味が変わった理由

その暗記力や検索能力に大した意味が無くなりました。以前は他に方法が無かったので、人間の頭脳を活用するのは仕方ありませんでした。

暗記力・検索能力に全く意味が無くなった訳ではありませんが、細かいことを全て暗記する意味は無くなりました。何故ならコンピュータ、タブレット、スマートフォンが変わりに覚えてくれるからです。そしてその中に覚えていなくても、インターネットにアクセスすることで情報を得ることが出来るからです。これまでの頭に詰め込む暗記する時間が必要無くなりました。既に手の中にあるからです。しかも人間の頭脳よりはるかに効率的に莫大な情報の中から検索することが出来るのです。暗記という入力の時間が必要なくなり、欲しい情報を手軽に取り出すことが出来るのです。

適切な情報を取り出すことは情報機器の発達により、生身の人間の頭脳を活用する必要が無くなりました。むしろ人間の頭脳では間違いも起こり得ますし、暗記にかかる時間も情報を取り出すのも非効率的なため望ましくありません。

暗記力・検索能力を人間に頼らなくなった実例

例えば病気の情報を得るのは以前であれば医者に聞くしかありませんでした。もしくは図書館にでも行って本を調べるしかなかったのです。どの本を調べると良いのか、そこから検索する必要があり莫大な時間を要したのです。今では手の中にあるスマートフォンに何文字か打ち込むだけで、ある程度の情報が手に入ります。わざわざ医者に行って聞く必要がなくなりつつあるのです。

弁護士の世界でも同じです。以前は法律に関する疑問を解決するには弁護士に相談するか自分で本を調べるしかありませんでした。今ではネット検索してみることで似たような情報を見つけることが出来るようになりました。今のところ全てが網羅されている訳ではありませんが、ある程度の情報を前もって得ることが出来ます。最低限の知識を得てから相談するので、相談するとしても短い時間で済んでしまいます。

弁護士の世界では過去の判例を探す必要がありますが、既に人工知能により検索するようになっています。この意味においても検索能力の意味が変わってきています。

今後の展望

暗記力と検索能力を買われて資格を与えられている医者や弁護士でさえ、上記のように機械化されつつあります。今後暗記力・検索能力を生かす仕事はほとんど無くなると思います。暗記力・検索能力が良ければ仕事が出来た時代は早晩過去のものになりそうです。

これからは抽象的な思考、あるいはより論理的な思考が求められる時代になると私は思います。

 

投稿者:

呉からの風

呉の医師です。 糖質回避教の推奨者です。 様々な分野で気づいたことを掲載していきます。 怒る必要のない子育てを掲載予定です。