血糖値が糖質の量だけで決まる訳ではない理由

血糖値は糖質の量だけで決まる訳ではないことを具体例で示しましたが、今回はその理由を中心に書いてみたいと思います。一言で言えば血糖値とは血液中ブドウ糖濃度であり、消化・吸収のスピードによって血液中ブドウ糖濃度は変化するからです。更に上がりかけた血糖値に対して分泌されたインスリンの働きにより、血糖値を下げようとした結果がその時の血糖値です。いわば糖質による足し算とインスリンによる引き算の結果がその時の血糖値です。糖質の消化・吸収、インスリンの分泌と働き具合に個人差があるため、糖質の量だけでは血糖値は決まりません。運動はブドウ糖を消費するため食後の運動はもちろん血糖値を下げますし、食前の運動でも血糖値を押し下げる働きがあります(参考:おにぎりと食前運動による血糖値の違い)。

鍋に塩を入れた際の塩辛さは塩の量だけでは決まりません。何故なら塩辛さは塩分の濃度が影響するはずだからです。同じ100gの塩を鍋に入れたとしても、鍋が1リットルの水の入った鍋に入れる場合と100リットルの水の入った鍋に入れる場合では濃度が異なるので塩辛さも違うはずです。つまり同じ塩の量でも薄める水の量によって濃度が異なるため、塩辛さも違うはずです。

血糖値も血液中のブドウ糖濃度のことなのでブドウ糖の量だけでは決まりません。血糖値は鍋の塩と水の量の関係のように単純に血液の量の多い少ないではないため少し複雑にはなりますが、似たような考え方で理解出来ます。

食べ物の中のブドウ糖が吸収され血液中に移行します。血液中に溶け込んだブドウ糖の濃度が血糖値です。ブドウ糖濃度が高くなるには、食べ物が消化され吸収されるという過程があります。糖質が消化・吸収されるスピードが早ければ、速やかに血糖値が上昇します。糖質の消化・吸収において糖質以外の食べ物があれば消化が妨げられるかどうかは実験をしてみなければわかりません。少なくとも吸収においては糖質以外の食べ物(タンパク質や脂質・食物繊維など)があれば腸管壁への糖質が消化されたブドウ糖と接触・吸収を邪魔するため血糖値の速やかな上昇は妨げられるはずです。このことはおにぎりだけ食べるよりタンパク質である唐揚げを食べる方が血糖値の上昇が緩やかになることから推測出来ます(参考:おにぎり2個と唐揚げの食後血糖値の違い)。

濃度の変化は濃度差が大きければ大きいほど速く起こります。つまり食べ物の糖質割合(食べ物中のブドウ糖濃度)が高ければ高いほど、血液中ブドウ糖濃度との差が大きくなるため速やかに上昇するはずです。

ただし糖質以外の食べ物が血糖値の上昇を妨げるためには、糖質と糖質以外の食べ物が均一に混ざることが必要なようです(参考:おにぎりと唐揚げの食べ方による食後血糖値の違いカップラーメンと唐揚げの食べ方による食後血糖値の違い)

私のようにインスリンの分泌や働きの悪い血糖値が200mg/dlをこえることがある人は食後血糖値が変動しますが、インスリンの分泌や働きが良い人(健常人)は血糖値は余り変動せず、食後でも150mg/dl以下に抑えられているようです。

またそれまでに食べた糖質の食べ方によってインスリンの分泌が変わる為か、しばらく糖質を控えていると血糖値が上昇してしまうようです。その為耐糖能の検査であるブドウ糖負荷試験の前には、あえて3日ほど糖質を食べるように勧められるそうです。

様々な点から食後血糖値は糖質の量だけでなく、いくつもの要因で変わるようです。ちなみに食後血糖値のピークの時間もいつも同じとは限らないようです。少なくとも私の場合、食べ物の種類や組み合わせによってピークの時間は変化しますが、今のところパターンのようなものは見出せずにいます。機会を見つけて一度真剣に私のデータで集計してみたいと思います。

投稿者:

呉からの風

呉の医師です。 糖質回避教の推奨者です。 様々な分野で気づいたことを掲載していきます。 怒る必要のない子育てを掲載予定です。