科学と宗教みたいな話

ふと思い立って科学と宗教みたいな話について書いてみたいと思います。何故科学と宗教みたいな話を書く気になったかと言えば、根拠に乏しい(少なくとも私にはあり得ないと思えるような…)『理屈』を言われる患者さんがおられますが、信じ切っておられるため『宗教』みたいだなと思ったからです。友人や知人から聞いて信じているならまだましで、酷い場合には他院で医者から私には根拠に乏しいと思われる『理屈』を言われた方までおられます。その根拠に乏しい『理屈』を信じている姿があたかも『宗教』のように私には思えるので書いてみようと思った次第です。根拠に乏しい(と私には思える)『理屈』と『科学』の違いを患者さんに伝える際に、それは言った人が信じている『宗教』のようなものですねとお伝えすると意味を一瞬で理解してもらえます。

『科学』と『宗教』の違い

私にとっては『科学』は現実で、『宗教』は空想の世界のような捉え方をしています。『科学』と『宗教』の違いは一言で言えば再現性だと思います。

『科学』は誰でも同じ結果になるという再現性があるため、多くの人に信じられています。その『科学』を使って様々な製品が生み出され、人々の生活を快適なものにしてくれています。結果を予測出来るのが特徴です。車のエンジンのスイッチを入れればエンジンがかかり、車を動かすことが出来るのは様々な『科学』の再現性の上に成り立っています。

『宗教』のはただ信じるだけで、結果を求めません。同じ状況であっても再現性がありません。

医学は『科学』?

医学は本来であれば再現性が担保される『科学』であるべきですが、まだまだ発展途上段階のため、物理科学のように数式で表すことの出来るような普遍の真理は見出されてはいません。しかしこれからの医学は再現性があるかないかで議論されるべきだと私は考えています。これまでは因果関係といえるまで突き詰めて原因を見出せないため、止むを得ず有意差で議論されていますが、有意差は答えに多少近づいているに過ぎないと思います。人間の身体は複雑な要素が絡まっているため治せないと思い込んでいるのかもしれません。1つ1つ再現性のある『理屈』を医学でも取り入れていけば、医学も『科学』に近づくと私は考えています。残念ながら今の医学は『宗教』に近いところが多々あるようです。

医学においては医学書や論文が正解とされていますが、現時点の最適解に過ぎません。その証拠に、物理科学のように証明された普遍の真理のようなものは全く見つかってはいません。手探りに近い状態で答えを探している状態です。

物理科学の公式のような普遍の真理が見つかっていないだけに、様々な理論や理屈が囁かれ、否定することも難しいため『宗教』のような話が広まってしまう余地があるのです。

医学における『宗教』の具体例

他院で言われたという驚くべき『宗教』のような教えはアトピー性皮膚炎などの皮膚病の場合、お風呂で石鹸を使ってはいけないという医者もいますし、お風呂そのものがいけないという医者までいます。その理由は石鹸は皮脂を過剰に取り除いてしまうから、お風呂そのものがいけないという医者は、アフリカではアトピー性皮膚炎がないが、その理由がお風呂に入っていないからという『理屈』らしいです。他に驚いたのは陥入爪という爪に感染を来す疾患で、体育の授業を休むように言われたそうです。

これら3人の医者は石鹸が悪い、お風呂が悪い、運動が悪いと信じているのです。あたかも『宗教』のように…。石鹸を使った場合、お風呂に入った場合、運動をした場合の違い、つまり結果には目を向けようとはしないのです。石鹸を使ったからといって悪化しなかったそうですし、お風呂に入ったからといって悪化したりましませんし、運動しても悪化したりはしませんでした。

まだ証明出来た訳ではありませんが、野菜から食べるという話も『宗教』のような話かもしれません。何故なら野菜から食べるよりも同時に食べる方が血糖値が上がりにくいかもしれないからです(参考:野菜サラダの食べ方による血糖値の違い)。少なくとも私の行った実験では、野菜サラダから食べるよりも同時に食べる方が血糖値は上がりにくかったですし、他の実験でも同時に食べる方が血糖値は上がりにくいようです。どうやら胃の中で混ざると思い込んでいた食べ物が実は混ざらないようです。

『宗教』のような話を実践する意味

『宗教』のような話を実践する意味は、一言で言えば気が済むだけです。しなければただ気が済まないただ信じているだけで違い・結果を求めないのです。

私自身は『宗教』を信じてはいませんが、否定もしません。何故ならわからないからです。ただ『宗教』を信じる『意味』は、気がすむというだけだと私は思います。時間毎にお祈りする『宗教』もありますが、お祈りしないからといって何か違う訳ではありません。ただ本人の気が済まないだけです。

上記の『宗教』のような話も、実践しなくても違いがありません。事実お風呂に入っても、石鹸を使っても悪化したりはしません。運動したからといって悪化もしません。つまり因果関係はないと判断して良さそうです。

『宗教』のような話も違いが出るかもしれませんので、実践してみても良いとは思いますが、因果関係がなければ気が済むという『意味』しかないため、やめてみても良いのではないでしょうか?

『宗教』のような話をする医者に直接聞いたことはありませんが、ただ闇雲に思いついたことを信じているに過ぎないのかもしれません。本来なら科学者であるべき医者が因果関係を確かめることなく、『宗教』のような話をさも当たり前のように広めているとすれば悲しい話です。

『宗教』のような話が『科学』のように因果関係があるかどうかを確かめるようにしてみましょう。

投稿者:

呉からの風

呉の医師です。 糖質回避教の推奨者です。 様々な分野で気づいたことを掲載していきます。 怒る必要のない子育てを掲載予定です。