人類が一夫一婦制を採用している理由

多少の例外はありますが、人類の多くは一夫一婦制を導入しています。

人間のやることには必ず理由があるはずです。
長年受け継がれてきた風習ですから何か合理的な理由があるはずです。

不思議に思っていましたがヒントになる記事を日経サイエンスでみつけました。
(参考文献:日経サイエンス2014年12月号 一夫一妻になったわけ)

700万年以上前に大型類人猿と人類の祖先であるホミニンが共通祖先から分かれた際に3つの革新的な変化が起こったそうです。

  • 二足歩行により食物を運ぶことができるようになった
  • ペアボンド(一夫一婦制)を採用するようになった
  • メスの排卵を知らせる外部シグナルがなくなった

食物を運ぶことができるようになったことで、オスは美味しい食材をメスに差し出すことで求愛をしたそうです。
それまでのメスの奪い合いに費やした労力を、オスはできるだけ広い範囲を効率よく探し回り貴重な食材を獲得することに振り分けました。
メスは強い戦士よりもより魅力的な食材を確保するをパートナーとして選ぶことにつながったそうです。
一夫一婦制を取り入れるにあたり、それまで存在していたメスの発情期をなくしたそうです。発情期があるとパートナーとして選んだオス以外を引き付けてしまうため、無駄な争いを避ける目的で発情期をなくしたようです。

一夫一婦制の期限の3つの仮説

  • メスのまばらな分布説
    メス同士が離れて暮らしていると複数のメスをパートナーとして選ぶのは困難となる
    魅力的なエサをオスに要求する種に見られる傾向がある
    人類は社会性を構築する種族でメス同士が離れて暮らすとは考えにくく、人類以外の動物ではよくあてはまる
  • 子殺し回避説
    強いオスに戦いを挑んで勝利したオスは、自分の子孫を残すために元のオスの子供を殺す
    子供を殺すことを避けるために、自分と自分の子供を守ってくれるオスを選ぶ
  • 父親による子の世話説
    子育てに父親が参加することで、子供の生存率が高まるほか、母親との絆もより深まる
    子供を抱いて運ぶだけで、授乳に匹敵するエネルギーが必要なため、父親が運んでくれるだけで母親には助けになった

統計的な解析では霊長類との比較では子殺し回避説がやや有意な可能性があり、別の統計では父親による子の世話説は最も可能性が低いと判定されたそうです。
学術的には最終見解はまだ出ていないようです。

私の考える一夫一婦制になった理由

か弱いメスが一匹で存在していたとは考えにくいと思います。
もしメスが一匹だけで存在すればオスは力ずくでわが物にすると思いますから、不用心な一匹で過ごすのは考えにくいと思います。一匹で過ごしていれば言語もふ発達しなかったと思いますから、否定的だと思います。

子殺し回避説は確かに一理あります。一夫一婦制を導入すれば子殺しは避けることができます。何故なら子供を守るために他のオスと父親が争う場合、母親も争いに参加することで2対1で子供を守ることができるのです。
サルをはじめとした他の動物ではオス対オスですが、一夫一婦制を導入した人類の祖先は二人で一組で家族としての絆で他のオスに対応することで勝負にならず、無駄な争いを避けることができたと考えられます。

父親による子の世話説。
私は懐疑的です。子供を抱いて世話をするよりも、母親がほしいのは子供がある程度まで育つ間の食料です。一緒に食料探しに移動するために子供を抱っこして父親に世話してもらうよりも、美味しい食材を探してもってきてくれる方が母親としてはありがたいはずです。先述した子殺し回避のためには母親の近くにいなければなりませんが、基本的には父親は食材探しだと私は思います。
人類は赤ちゃんが他の動物に比較して圧倒的に未熟な状態で生まれます。何故なら他の動物と同程度まで母親の胎内で育ってしまうと産道を通り抜けることができないからです。首がすわらない状態で生まれるのはそのためです。首が座るまでは母親は赤ちゃんを抱っこしたまま動くことができません。合理的に考えれば母親も出産で体力を消耗し授乳もするので、食料を父親と一緒に探し回るよりも、食料を確保してきてもらうことを望むはずです。少なくとも赤ちゃんの首が座るまでは移動は避けたいはずです。

人類は出産後の子育てに労力があまりにかかるため、夫婦二人で子育てに当たり役割分担したことが考えられます。夫婦二人で子育てすると有利になるというよりは、子供が小さいうちは母親だけでは安全には子育てができなかったのではないでしょうか?
このあたりに一夫一婦制になった合理的な理由がありそうです。

そして一夫一婦制では一度パートナーを決めると次のパートナー選びという作業が必要なくなるため、子育てに専念できるというメリットがあります。
ゴリラなどの一夫多妻制では維持するのに多大な労力を使いますし、新たにボスの座を獲得するのに多大な労力を必要とするのと対照的です。一夫一婦制はより多くの個人が安全に子孫を残せる合理的な仕組みだったことが考えられます。ボノボのような乱交型だと、子育ての際に食料を運んでくれない可能性があるため子育てに多大な労力を要する人類にとってはパートナーを決めるということに大きな意味があるようです。

人類の進化の歴史で培った一夫一婦制の意味は、赤ちゃんが他の動物と比べて非常に未熟な状態で生まれることに由来すると思います。子育てを二人で行わないと安全に育てることができないことから、発達したのだと私は思います。

子孫を安全に残すために一人のパートナーを決めることに意味があるのです。
ちなみに通常は一夫多妻のお猿さんですが、メスザルがボス以外の若いサルを誘惑して浮気することもあるようです。

人類でもたまに浮気してしまう人が存在するのは先祖返りの一種なのかもしれません。

投稿者:

呉からの風

呉の医師です。 糖質回避教の推奨者です。 様々な分野で気づいたことを掲載していきます。 怒る必要のない子育てを掲載予定です。