思いやりという名の価値観の押し売り?

今回思いやりの『意味』を深く考えてみます。

本来思いやりとは相手の事を考え配慮することです。この思いやりですが、無意識のうちに自分の立場から見た相手の事を思いやるという価値観の押し売りをしていないでしょうか?
本当の思いやりは相手の立場になって、相手の事を考えてあげることです。

みんなが本当の意味での思いやりを持って行動すれば、争いが減ると私は思います。

相手の事を考えていると口では言っても、本当に相手の立場に立って、相手の事を考えてのことでしょうか?実は相手の事を考えてという名目で、自分の立場からの価値観を押し付けてはいないでしょうか?

相手の立場に立って考える

最終的に困るのが相手であれば相手の問題です。(問題論)
その相手の問題を自分の立場から口出しするのは越権行為です。相手の立場に立って物事を考えた経験のない人には、相手の立場に立って考えるとは想像つかない考え方のようです。思いやりとは本来相手の立場で相手のことを一番に考えてあげることです。

例えばある親子の話

例えば子供が高校には行かないと言い出しました。親は高校くらい出ていないと将来困ると考えて子供に高校に行くことを強く勧める場面を思い浮かべて下さい。

親としては高校を出ていないと将来困ることを知っているので、高校に行くことを勧めるのは思いやりだと思っています。本当に相手の立場に立って相手を思いやる思いやりと言えるでしょうか?

子供の思い

子供は職人として一生生きていくことを決心し、高校に通う三年間が勿体無いと考えて高校に行かないと言っています。1日でも早く一人前の職人になるために高校に行かないと決心しているのです。それでも高校に行った方が良いと強く勧めるのは本当の思いやりでしょうか?

親の思い

親は子供が高校を卒業していないと将来苦労する可能性が高いことを知っているため、高校への進学を勧めています。親の立場からした思いやりではありますが、親の立場からの価値観です。職人として一人前になれなかった時のことを勝手に考えて、先回りして考えてしまうのです。

そして子供は親の知っていることを知らないのです。

子供の将来のことは明らかに子供の問題です。困るのは子供にも関わらず、本来困らないはずの親が自分の問題のように誤解してしまうことが良くあります。子供の問題に例え親だとしても口出しするのは越権行為です。

思いやる方法

では本当の思いやりであればどうすれば良いのでしょうか?

まず相手の思いの確認

ここでの問題は親と子の思いにズレがないかの確認がなされていないことです。生きている年数が違うので親と子では持っている情報量が全く異なります。

例えば職人さんの世界の厳しさを親は何となく知っていますが、子供は全く知らないだけかも知れません。職人さんの世界に入って逃げ出すかも知れないと親は心配しますが、厳しさを知らない子供は一人前になれると信じきっているかも知れません。

職人さんになれなかった場合、中卒での就職はかなり難しいことを親は当然知っていますが、子供は職人以外は考えたこともないだけかも知れません。

もしかしたら職人さんへの憧れもあって深く考えずに、職人を目指しはじめただけかも知れません。

本当の思いやり

子供の立場に立って考えてあげることです。子供は1日でも早く一人前の職人になることが目的なので高校に行くことを無駄だと考えています。

親は職人として一人前になれなかった時、中卒での就職を考えるとかなり不利になることを心配しています。親が子へ高校への進学を勧める場合、このことは親にとって常識なので子供も知っているはずとして説明せず、高校への進学だけを勧めてしまいます。

子供への伝え方を間違うと大変な誤解を招くことがあります。子供としては今から一生懸命頑張ろうとしているのに、上手くいかない場合の話をするのは子供にとって許し難い考え方に思えるようです。大人の駄目な場合を想定して、準備しておくという発想そのものがないため、あたかも親が失敗を望んでいるかのように誤解してしまうのです。

本当の思いやりであれば、子供が大人と同じ情報を得てから将来のことを判断したか確認してあげることです。例えば以下の3つです。

  • 職人さんの世界は厳しいけど耐えられるのか?
  • 職人さんになれなかった場合、就職は困難だから職人さんを諦めてから高校に行くことになるかも知れないけどそれでも良いのか?
  • 高校は勉強だけではなくて、三年間かけて同い年の友達を作る場でもあるけれどもその機会を失っても良いのか?

親も子供が憎くて言うわけではありませんが、子供の立場から考えてあげないと子供には全く理解できません。親子の持っている情報量の差が大きすぎるため、伝え方を間違うと関係がこじれてしまいます。親は子供と同じ立場を想像し、何故そのように子供が考えたのか、そして親の知恵を使って子供のためになる選択肢を広げてみてあげて下さい。

本当の思いやりとは相手の立場に立って考えることだと思います。自分の立場から相手を思いやるというのは思いやりという名の価値観の押し売りです。相手のためにならず、自分の価値観の押し売りになってはいないでしょうか?

投稿者:

呉からの風

呉の医師です。 糖質回避教の推奨者です。 様々な分野で気づいたことを掲載していきます。 怒る必要のない子育てを掲載予定です。