一昔前までは仕事を見て覚えろと言われていました。いちいち細かいことまで説明されずとも見よう見真似で覚えていました。伝統的に自分が見て覚えたから、人にも同じことを要求することが長年続いていたのです。昔はそれで問題ありませんでした。何故なら競合は少なく時間だけはあったからです。時間の流れが非常に緩やかだったので、長年かけて見て覚えたとしても問題なかったのです。むしろ使う側にとっては、見て覚えろという方が3つの意味で都合が良かったのです。一つ目は細かく説明する面倒さがないこと、二つ目は技術の習得を餌に安い労働力を確保出来ることです。三つ目は素早く技術を習得してしまうと、教えた人間にとってライバルになるので、教えたくはなかったのです。一言で言うならば教えない方が、お得だったのです。だから見て覚えろと言って説明を避けていたに過ぎません。
言い訳
見て覚えろというのは、上手く説明出来ない言い訳に過ぎないと私は思います。自分では出来ても人に説明出来る程には理解出来てはいないのです。人に説明するには、自分の行動の目的や調整方法を細かく言語化して説明する必要があります。この言語化という作業が出来ないことを隠すために、見て覚えろと言うのです。
私は的確な説明スキルを持ち合わせていないという意味で、怠慢だと思います。その上で情報を教えたくない言い訳をしているように思います。
見て覚える時代は終わりつつある
見て覚える時代は終わりつつあります。見て覚えるしか選択肢の無かった時代には、選択肢がないので見て覚えていました。今では説明が上手な人も増え、見るだけではなくコツも含めて早く習得出来るように説明してくれるようになってきています。
情報が増えていることもあり、見て覚える以外の選択肢が出てきました。コツややり方そのものの解説をネットで見つけることが出来るかもしれませんし、そもそも見て覚えろと言われる人から逃げ出すことも容易になりつつあるのです。
見て覚えろという情報の出し惜しみをしていると、相手にされなくなってしまうかもしれません。事実職人さんが人を集めにくくなっている原因の1つは見て覚えろという昔気質の考え方かもしれません。