糖質を食べ過ぎることで様々な問題が起こるようです。
例えば肥満は糖質の食べ過ぎによる最たるものでしょう。これは誰にでも起こりえます。
2型糖尿病は糖質を食べ過ぎた人の中で耐糖能に限界がきて血糖値が下げられなくなる病気です。直接血糖値を押し上げる唯一の食べ物である糖質が、原因であることは明らかです。一部の人達しか発症しないため問題が表面化しにくかっただけのことです。その証拠に糖質を食べなければ、薬を飲むことなく治ります。
他にもアレルギーや自己免疫性疾患など様々な問題が糖質回避により治ります。今回は特定の免疫不全に関する仮説です。まだ仮説の域は出ませんが、このように考えなければ説明がつきません。この仮説よりも優れた新たな仮説が出てくるまでは、この仮説を使って様々な病態を解釈しても良いのではないかと思います。
糖質による免疫不全
免疫不全とは本来人間に備わっている細菌やウイルスや寄生虫に対抗する免疫機能に障害を生じるものです。有名な免疫不全にはHIVによるエイズがありますが、これはウイルス感染によって免疫機能が破壊され、本来なら病気にならないような弱い細菌やウイルスにも対抗出来なくなり死に至る病でした。幸い薬が進化して死に至る病ではなくなりました。エイズは広範な免疫機能を働かなくしてしまいますが、糖質による免疫不全は極狭い範囲です。しかも糖質を食べ過ぎることで免疫機能が低下し、糖質を控えることで復活するようです。糖質による免疫不全は無数にある免疫の組み合わせの中で、特定の免疫が働かなくなってしまうようです。免疫が働かなくなっても、それに対応する病原菌や病原ウイルスが入り込まなければ問題とはなりません。逆に言えば、慢性感染症は糖質による免疫不全によって生じる可能性があります。
糖質回避がニキビに有効であることは夏井先生も指摘されています。夏木先生は脂質代謝がニキビに関係すると考えておられますが、糖質を食べ過ぎると翌日か翌々日にニキビが新生することから考えると脂質代謝によって発症すると考えるのは無理があるように私は思います。極狭い範囲(この場合ニキビの病原菌に関する免疫)の免疫不全が関係するという仮説を考えました。であれば他の慢性感染症も糖質が原因だと考え、糖質回避をしてもらい、改善しますので仮説は今のところ間違いなさそうです。状況証拠から恐らく血糖値が一時的に上昇することで、特定の免疫不全を引き起こすと考えられます。医師が目にするのは特定の免疫不全の結果として症状があらわれた病気ということです。
糖尿病でも免疫不全が言われてもいますが、この特定の免疫不全がいくつも積み重なることで不特定の免疫不全として現れている可能性が考えられます。糖尿病の易感染性は特定の免疫不全が多数合わさった結果かもしれないのです。免疫不全に陥っている免疫に対応する病原菌や病原ウイルスな曝されなければ発症しなくて済むようです。
あくまでも仮説ではありますが、このように考えれば糖質による感染症の理解が容易になります。
糖質による免疫不全の例え話(仮説)
免疫は身体のガードマンのようなものです。ガードするべき自分の身体は相手にせず、侵入者を見張り侵入者を見つけると攻撃するのが仕事です。このガードマンは働きが細分化され、担当者が決まっています。例えばニキビ菌担当、イボを引き起こすウイルス担当など様々です。その中でニキビ菌担当のガードマンが休んでしまうのが糖質による免疫不全の考え方です。
糖質によりガードマンである免疫がどのように休まされるのかはまだわかりません。アトピー性皮膚炎糖質同じようなことが起こっているとすれば、一時的な高血糖が何らかの引き金となっているのではないかと考えます。一時的な高血糖を生じない食べ方でこれらの特定の免疫不全による感染症は無くなると思います。
免疫不全の具体例
ニキビ(尋常性ざ瘡)、イボ(尋常性疣贅)、化膿性爪囲炎などは糖質回避により改善しています。
ニキビはアクネ菌による感染症だと考えられてきました。だから抗生物質で治療するのです。そして抗生物質に反応するので感染症だと考えられています。しかし抗生物質に反応しにくい場合があります。これは抗菌力の無い抗生物質が使われているからだと考えられていますが、実は糖質による免疫不全により抗生物質を投与しても効果が薄い可能性があります。抗生物質をアシストするはずの本来備わっている免疫が働かなくなっている可能性が考えられるのです。何度も抗生物質を変更しても改善しない場合には糖質回避をしてみると治るかもしれません。
出来てしまったニキビは抗生物質によって治療します。新しくニキビが出来るのは糖質を食べ過ぎた結果です。糖質を食べ過ぎると翌日か翌々日にニキビが新生します。そのため食べても大丈夫な糖質の許容量を探すため、アトピー性皮膚炎の振り返り法を活用することが出来ます。新しくニキビが出来なければ前日までの糖質の量は大丈夫と考えます。新しくニキビが出来れば1日か2日前までの糖質の量が食べ過ぎです。糖質の許容量をこえてしまったので食べ過ぎを探すのです。
免疫不全説はもしかしたら間違っているかもしれませんが、糖質を控えることでニキビが出来なくなることは事実です。
イボ(尋常性疣贅)
パピローマウイルスによる感染により引き起こされます。誰にでも感染する可能性がありますが、幾つも出来たり治療に反応しないことがあります。ニキビが糖質回避により改善するのは、糖質による免疫不全の仮説からイボに対しても免疫不全が生じている可能性を考えました。免疫不全があるから身体を守るガードマンが働かず、幾つものイボが出来てしまうと考えたのです。治療に反応しないのも、ガードマンによるウイルスへの攻撃がないから改善しないのではないかと考えました。
数が多い方、治りにくい方を中心に仮説を説明し、糖質回避をして頂くように伝えました。信者のように信じて下さった方が現在7人程治りました。糖質が特定の免疫不全を引き起こす仮説が正しい可能性を示唆します。
お一人は他院で一年間治療しても良くならない20個程度のイボがありました。糖質回避(主食無し)と治療により1週間で半分になりました。お一人は他院で半年治療しても治らない2cmのイボが足底にありました。糖質回避(1食のみ主食、2食はおかずのみ)で1週間で半分程度の大きさになりました。お二人とも治癒には2ヶ月程度かかりましたが、他院での治療で反応しなかむた病変が糖質回避により改善しました。1週間で効果が出始めたことは驚きでした。
治療に反応しなかったのは糖質による免疫不全により、ウイルスに対する免疫が働かなくなっている可能性が考えられます。糖質回避により免疫不全が解消されるため、治療に反応するようになるのではないかと考えます。このことも糖質による特定の免疫不全の仮説を示唆します。
化膿性爪囲炎
深爪をすると皮膚に小さな傷が付きます。その傷口から細菌が入り込み細菌感染を起こすのが化膿性爪囲炎です。これも偶然病原性のある細菌が入り込んだことで起こる感染症だと考えられてきました。
多くの場合にはニキビ同様抗生物質が有効です。稀に抗生物質に反応しにくい化膿性爪囲炎に遭遇することがあります。抗生物質に反応しにくい場合、特定の免疫不全が病原菌に対応している可能性が考えられます。
細菌培養を行い病原菌を特定し、抗菌力のある抗生物質を投与してもなかなか改善しないことがあるのは病原菌に対する免疫不全が生じている可能性が考えられます。抗生物質で頑張って抑えようとしても免疫からの援護射撃がない(本来なら主力であるはずですが)ので治らない可能性があります。
事実糖質回避により長引く化膿性爪囲炎が改善しています。やはり一連の仮説が正しいことを示唆します。
長引く化膿性爪囲炎の患者さんには糖質回避を試してみる価値はあります。刺爪(深爪が皮膚に食い込む病態)の場合には、爪を適切に切る必要があります。
爪の周りが痛くても忙しくて受診出来ない方も、駄目元で糖質回避を試してみることをお勧めします。
糖質による特定の免疫不全が原因だと考えられる感染症
慢性感染症は糖質による特定の免疫不全に対する病原菌やウイルスによって生じている可能性が考えられます。抗生物質や抗ウイルス薬などの治療になかなか反応しない場合も特定の免疫不全が原因の可能性が考えられます。感受性のある抗生物質を投与しても改善しないのが、本来なら備わっているはずの免疫が働かなくなっている可能性があるのです。抗生物質は頑張っても援護射撃するはずの免疫が休んでいるので抗生物質が効きにくいかもしれません。
例えば治療に反応しにくい肺炎、もしかしたらヘリコバクターピロリ除菌後の再感染なども糖質による免疫不全が感染の原因なのかもしれません。繰り返す口唇ヘルペスも糖質による特定の免疫不全を起こしている人だけが繰り返し発症している可能性があります。
駄目元で糖質回避をしてみる価値はあると私は思います。