私も血糖値のことを考え始めた当初は、糖質の量に依存すると考えていました。何故なら血糖値を直接上げる食べ物は糖質だけだからです。糖質を食べると血糖値は上がり、糖質を食べなければ血糖値は上がらないというシンプルな理屈はわかりやすく、糖質の量に応じて血糖値は上昇すると考えていました。
そのため糖質による病気を治すために、患者さんに糖質の量を減らすことを提案していました。ところが大して糖質を食べていないとおっしゃる患者さんの中に明らかに治りにくい方がおられたのです。患者さんも嘘をついておられる訳ではなさそうであり、病気を思うように治せないことで途方に暮れてしまいました。
糖質の量だけが血糖値に影響を与えると考えていた私は、まるで迷路に迷い込んでしまったかのようでした。その迷路から救い出してくれたのは、血糖値持続測定器 リブレでした。
私が身につけてみて、これまで疑問に思っていたことを実験して確かめてみました。
糖質の量と食後血糖値の関係
糖質の量が一定量までは糖質の量に依存して食後血糖値は上がりますが、一定量を超えると変わらなくなるようです。
おにぎり1個とおにぎり2個の血糖値がほとんど変わらなかったため、おにぎり半分でも同じ血糖値になるかと考えて、試してみました。おにぎり半分では血糖値の上がり方は低く抑えられました。
おにぎり3個の血糖値は確かめてはいないため、今のところ推測に過ぎません。
おにぎり1個と唐揚げの食べ方による食後血糖値
おにぎり1個と唐揚げを食べてみた食後血糖値ですが、食べる順番により食後血糖値が変わることがわかりました。
今度は全く同じ糖質の量にもかかわらず、食後血糖値が異なるグラフを表します。食後血糖値が糖質の量によって決まるとは限らない動かぬ証拠です。
食べ方による違いを見つけた経緯
上のグラフを出すことが出来たのは、食べ方により食後血糖値が異なる謎を解いたからです。謎とはおにぎりと唐揚げをそれぞれ食べ終わってから別のものを食べる食べ方では胃の中で混ざらないのではないかということです。胃の中で混ざらないと仮定して、必ず混ざるように口の中で混ざる食べ方をしてみました。具体的には唐揚げをかじって、飲み込む前におにぎりもかじって口の中で混ぜて飲み込む食べ方です。
おにぎり1個と唐揚げを食べた場合、おにぎり1個と比べて大幅に下がると期待していました。おにぎり1個を食べてから唐揚げを食べてみると、血糖値の上昇が遅れるだけでおにぎり1個と変わらない食後血糖値となりました。食べる順番に問題があるかと考えて、おにぎりを食べた後で唐揚げを食べてみましたが、少し下がるだけでした。前後の食べ方により食後血糖値の上がり方に違いが出たため『意味』があるとは思いましたがすぐにはわかりませんでした。しばらく考えて見つけた仮説が胃の中で混ざらないのではないかということでした。実証するためには胃の中で混ざる食べ方をしなければいけません。そこで考えついたのが口の中で混ぜる食べ方です。
結果は期待通りでした。それぞれ別々に食べたのでは胃の中で混ざらない可能性が示唆されました。
血糖値の上がりにくい食べ方は糖質と糖質以外の食べ物を同時に食べることであることが導き出されました。
食べ方により食後血糖値が異なる理由
食べ方によっては胃の中で食べ物が混ざらないようです。糖質と糖質以外の食べ物が混ざらないと食後血糖値が上がる理由は、糖質以外の物が消化され腸壁に触れても血糖値は上昇しませんが、糖質の消化された部分が腸壁に触れると急速に吸収されることで血糖値が急上昇します。均一に混ざっていないと吸収にバラツキが出ますが、糖質部分が一度に吸収されることで血糖値が急上昇してしまいます。
糖質と糖質以外の食べ物が均一に混ざっていると、混ざっている分腸壁に一度に触れる糖質が少なくなるため吸収が緩やかになることで、血糖値の急上昇を避けることができます。
糖質がどれだけ腸壁に触れる頻度は、単純な物理の考え方で食物中の糖質割合に比例するはずです。つまり同じ糖質量でも糖質割合が低ければ、糖質以外の食べ物が糖質を吸収する腸壁へ糖質が触れることを邪魔するため、血糖値が上昇しにくくなります。糖質を食べる場合には糖質割合を下げるために糖質以外の食べ物と同時に食べるこたが良さそうです。
食べ方と糖質割合を検証していない食後血糖値の実験は参考にならない
私1人が行った実験でさえもこれだけの違いが出てしまうのですから、食べ方と糖質割合を検証していない実験は、参考にならないように思います。何故なら食べ方と糖質割合により食後血糖値が影響が検証されていないと、データがバラついてしまうからです。
野菜から食べるように世間一般では言われていますが、私の行った実験では野菜から食べるよりも同時に食べる方が血糖値は低く抑えられました(参考:おにぎりとサラダの食べ方による食後血糖値の違い)。他の方の実験では、後先の順番だけで同時に食べるという発想がなかっただけなのかもしれません。
今後リブレが活用されることで、食べ方による食後血糖値の違いが検証され、血糖値の上がりにくい食べ方が早く広まることを祈っています。